専門領域の取り組み

がん化学療法看護認定看護師

  • この分野を選んだ理由

  •  がん化学療法を受けられる患者さんやご家族は、様々な葛藤を抱えながら治療を選択し、副作用に対するセルフモニタリングをしながら入院、あるいは外来で治療をされています。日々看護を提供する中で、患者さんが少しでも副作用を軽減する方法や、日常生活に取り組んで治療を継続できるようにもっと知識を向上させたいと思いました。また、患者さんやご家族が決定した意思を支援できる看護を提供したいと思い、選びました。

  • 実際の活動内容

  •  がん化学療法は作用域と副作用域が狭いことや、最大の効果を出すために多剤併用で治療を実施するのが特徴的です。そのため、がん化学療法が安全に実施できるようレジメンをアセスメントし、投与の順番がレジメン通りに登録をされているか薬剤部と連携して実施しています。現在は外来勤務のため、外来化学療法を実施される患者さんが、自宅でセルフケアを継続できるよう支援しています。また、がん看護相談を実施し患者さんの意思決定場面を支援しています。入院中の患者さんには、活動日を通してスタッフがケアを提供できるよう相談にのり、ケア方法を検討しています。さらには、職員が安全に投与を実施できるよう曝露対策に取り組んでいます。

  • 今後すすめていきたいこと

  •  がんは共存して生きていく時代となり、入院、外来、更には地域へと継続した看護が求められています。がん化学療法を受けられる患者さんやご家族が、どの場所においても安心して、かつ安楽に過ごすことができるよう他職種との連携を強化し、明確となった問題にチームで取り組んでいけるよう調整役として担っていきたいと思います。

  • 専門領域の看護師を目指す後輩に向けてアドバイス

  •  教育課程では、知識が向上するだけではなく「自分が大切にしている看護は何か」を見つめ直す良い機会となります。学んだことが全て実践できるわけではありませんが、患者さんやご家族にとって良い影響を与えられた時の喜びは何にも変え難いものがあります。これから目指したいと考えている方は、ぜひチャレンジしてほしいと思います。

院内認定HIVコーディネーター

  • この分野を選んだ理由

  •  国際協力に興味を持ったことがきっかけでHIV感染症看護に関心をもつようになりました。エイズ拠点病院である当院へ入職しHIV感染症看護を経験していく中で、研修に参加しHIV診療の歴史や治療薬の進化を学ぶことで患者の思いに寄り添う看護を再認識しました。また、当院では多職種が連携して多様な患者のニーズに応じた療養生活をサポートしており、そのチームの中で看護師としての役割を果たしていきたいと思うようになりました。

  • 実際の活動内容

  •  現在のHIV治療薬はほぼ一生服薬を継続する必要があり、患者自身が定期受診、内服管理、二次感染予防などについての正しい情報を取り入れ、生活の中で習慣化できるように支援しています。また、患者の高齢化に伴う生活習慣病の増加、依存症、精神疾患などHIV以外の診療科を受診する患者が増えています。私たちは、他診療科、MSW、薬剤師、栄養士、カウンセラー、NGO団体と連携し、患者の療養環境をサポートしています。また、当院は血液疾患、血友病関連関節症、クローン病など若年層者も多く、手術前後、化学療法後、移植前後などのセクシャルヘルス支援に努めています。

  • 今後すすめていきたいこと

  •  HIV感染症は治療薬の進歩により慢性疾患と捉えられるようになりました。一方で患者の抱える問題は多様化してきており、高齢化に伴う生活習慣病、認知機能低下による受診や内服忘れ、薬物やアルコールなどの依存症、病気の告知やプライバシー漏洩の不安など様々ですが、患者のニーズを見極め患者自身が意思決定できるようタイムリーに支援していきたいと考えます。また、看護スタッフのセクシャルヘルスケアへの意識はまだ低く、今後看護スタッフから患者へ発信できるように、役割意識向上のため研修を実施しています。

感染管理認定看護師

  • この分野を選んだ理由

  •  当院は、疾患や治療により免疫力が低下した患者が非常に多く、治療を継続していく上で、感染症のコントロールがとても重要だと感じてきました。時には感染症により状態の悪化を招くことがあり、つらい思いをされている患者の姿を見ると、もっとできることがあったのではないかと考えさせられたことがありました。私達が日常的に行っている看護行為のひとつひとつが、感染のリスクに成り得ることがあり、感染対策は看護師が身につけなければならない大切なスキルです。看護部の感染管理委員会の役割を担う中で改めて感染対策の重要性を感じ、もっと勉強したいと思い感染管理認定看護師の資格を目指しました。

  • 実際の活動内容

  •  現在、当院には感染管理認定看護師2名と、感染制御実践看護師1名がおり、3人で協力して活動を行っています。また、ICT(Infection Control Team)という医師、薬剤師、検査技師の方たちと合同で院内の感染対策に取り組んでいます。
     感染対策は、病院全体で起こり得る様々な感染の発生を未然に防ぎ、発生した場合には早急に対処し感染の拡大を最小限にとどめることが重要な役割です。主な活動としては、院内をラウンドし、感染対策がきちんと行われているか確認することから始まります。日頃からの感染予防に対する意識付けと、感染を防ぐための行動を習慣化していけるように教育、実践、指導を中心に必要な支援を行います。また、感染を未然に防ぐためには、感染リスクの高い医療行為についてのデータ収集と分析が不可欠になります。このサーベイランスにより、院内で何が起きているのか手掛かりになり早期対応できるようと努めています。

  • 今後すすめていきたいこと

  •  感染対策は一人だけが頑張っても効果がなく、どんな状況でも誰でも確実に感染対策をできるようになることが重要です。そのためには感染に関する取り組みを自ら考え、進んで行える実践モデルとしてリンクナースの育成に力を入れています。また、院内の誰もが感染対策を実施できることを目指し、検査部や放射線科などの他部門の環境においても活動を広げていきたいと考えています。感染対策を行うことで感染予防ができることを実感してもらえるように、現場にあわせた提案や教育ができるように取り組みたいと考えています。

輸血認定看護師

  • この分野を選んだ理由

  •  血液疾患看護に携わり輸血治療に関わる機会が多くありました。特に当院では造血幹細胞移植症例が多く、血液型の変化など輸血を取り巻く状況も特殊であることや、取り扱う輸血用血液製剤の多さ、患者さんの高齢化などにより長期間繰り返し行う輸血によっておこる輸血副作用の管理などを通し、輸血療法の重要性を感じました。輸血療法時に患者さんに一番近い、ベッドサイドで観察やケアをおこなう看護師として、正しい知識を身につけ、安全な輸血医療を提供したいと考え資格を取得しました。

  • 実際の活動内容

  •  セルプロセッシング・輸血部や、他部門と連携をとりながら院内の輸血マニュアルや、看護師の輸血管理・実施手順の整備、輸血用血液製剤の保管方法、輸血副作用に関する情報共有と対応の検討など輸血療法に関する様々なことに取り組んでいます。また患者さんと医療者が知識や、個々の状況を共有できるツールとして「輸血手帳」の作成を行い運用しています。
     病棟に配属されている臨床輸血認定看護師は、臨床での指導や各部署での勉強会の実施を行っています。2017年度より臨床輸血認定看護師研修施設として、新たに臨床輸血認定看護師を目指す他施設の看護師の研修プログラムの検討、実施なども行っています。 

  • 今後すすめていきたいこと

  •  安全で、確実な輸血療法の実施ができるようなシステムの構築や、看護師が輸血療法に対する正しい知識を獲得するためのサポートを行っていきたいと考えています。また「輸血手帳」の活用を進めていくことで、患者さんの輸血療法への理解や知識の向上にも努めていきたいです。

  • 専門領域の看護師を目指す後輩に向けてアドバイス

  •  輸血は、他人の血液成分を体内に入れる臓器移植の一つであり現代医療には不可欠な補充療法です。私は、血液疾患看護を通して輸血医療に興味を持ち資格を取得しましたが、手術室や救命救急、産科、血液疾患以外の疾患でも輸血療法はあらゆる場面で行われています。安全な輸血医療を提供するためには、正しい知識と専門性、多職種との連携が必要となります。より安全な医療の提供のために資格取得にチャレンジして欲しいと思います。